現場監督の考える事

今回は家を建てようと思ってる方や住宅にはあまり関わりのない話なので、お時間のある方だけどうぞ。

現場監督って、資格が要らないんですよ。だから、昨日までファミレスで働いてた人が今日から「現場監督です」って言って現場に来ることもある。

「監督」っていうくらいだから現場で一番権限があって偉い人、というイメージがあるかもしれないけど、それは全然違う。実際は建築のけの字も知らない素人が、職人にあれこれ指導されながら1個1個覚えてく、みたいな現場もけっこうあります。むしろ建設業界では現場監督から始めるっていうのが定石と言ってもいいかもしれない。もちろん施工管理技士や建築士の資格を持っていて現場で一番権限のある監督もいる。知識・経験にかなりの幅がある職ではないだろうか。

素人監督、これが良いとか悪いというのは一概に言えないと、私は思っています。
資格が無くて素人だからといって、イコール「仕事が出来ない」わけじゃないですからね。

素人だろうが何だろうが、知識や段取りの吸収が早い「デキる」人は存在する。こういう人は、何年もかけなくてもすぐ知識や技術を身につけ、資格の有無なんて関係なく「現場監督」を名乗るにふさわしい人になる。
一方で、資格を持ってたって何の役にも立たない人もいる。まあ、こういうのはどの業界でもあることでしょうが。

大事なのは、現在の立場で何を考えるかってことです。
資格を持ってない、知識も経験も無い、しかし縁あってこの業界に足を踏み入れた自分がここでやるべきことは何なのか?
思考の水準、努力の方向性、自分の仕事のしかたが合っているか。常に自分に問わなければならない。自問自答を繰り返す人は、周りがわざわざ教えずとも勝手に理解し、自分のものにしていく。

なんで急にこんな話をしたのかというと。

私、知識・経験無しに現場監督として飛び込んでくる人の面倒をみる機会が多い気がします。大抵は中途採用で住宅販売会社に入社してきて、その会社も建築知識がある人間がいないもんだから、その会社の確認申請を担当している私にお鉢が回ってくる。

全然、世話好きではないです。ただ、始めたからには真っ当な監督になって欲しい。なんか放っておけずつい色々と面倒をみてしまう。いや、こういうのを世話好きというのか?

これまで何人ものそういう人間を見て来て思うわけです。大事なのは、「何をやってるか」じゃなく「何を考えるか」だと。目の前のこれが何の工事なのかは当然見て知っておくべきではあるが、その本質は「そこから何を学ぶか」である。この工事は建築の中のどの過程にあって、この工事できっちり管理するべきポイントはここで、関わる業者はこれだけあって、次の段取りは。色々考えていると、わからない事が出てくる。それを調べたり現場で聞いたりする。そのうち、自分が何が解らないのかが判るようになる。それが、理解への第一歩。

見ているものは1つでも、人によってそこから得る情報には雲泥の差がある。「目の前の事をただ見ている」「目の前の事だけ覚える」だけの人も多いのが現実。

 

本来、現場監督というのは、現場に出入りするあらゆる業者の仕事を見て良い物が出来上がるように統括するのが役割です。当然、現場監督が良いと、良い家が出来ます。さらに言うと、一番長期間にわたって現場で仕事をするのは大工なので、大工が良い現場も、良い家が出来ます。両方ちゃんとしてると、だいぶちゃんとした家が出来上がります。

数えたことは無いけど、一般住宅でもおそらく100人近くの業者が出入りしています。工事の進捗を見ながら材料や業者の段取りをして、それぞれの工事の品質を見て・・・本当にやることが多いし内容も多岐にわたります。当然、全ての業者の仕事の内容を知っていなければならない。施主さんが現場監督に会う機会というのは、ハウスメーカーみたいなところだと現場見学に行った時かクレーム対応の時くらいかもしれませんが、家のために影で苦労してる存在なので、もし会う機会があったらいたわってあげてください。

さて。

「現場監督」兼「設計者」兼「監理者」の私が張り付いてやいやい言ってる、当然、大きなトラブルもなく基礎工事完了。基礎工事の彼らは思っていることだろう、「この現場の監督はずいぶん細けえな」と。そう思ってもらえばこれ幸い。

数日の養生期間を経たら、いよいよ木工事です。