浴室に窓、いる?いらない?

2~3年前、木工事を担当した湯川村の現場は「お風呂に入りながら磐梯山を見たい」という施主さんで、東側に向けて開けられる大きな窓が印象的な家でした。

一方で、3年前、弊社設計施工した喜多方の家では、「窓なんか邪魔以外の何物でもない」ということで窓(だけじゃなく棚やカウンターまで)無し!という掃除しやすいお風呂が出来上がりました。

どっちが良い悪いということではありません。施主さんの希望が叶えば、どっちも最高のお風呂。

 

お風呂に窓いる・いらない論争は私もしょっちゅう耳にします。自分の頭を整理するついでに、メリットデメリットをここにまとめておこうと思います。

■採光・眺望
昼間にお風呂に入る機会がある人にとっては、窓、しかも大きめで外が見られるような窓であれば解放感抜群の入浴が楽しめます。お風呂の窓をあけても視線を気にする必要が無い立地(または塀などで囲った庭がある)にお住まいの方におすすめ。

■防犯
防犯上は浴室の窓は弱点になります。開けっ放しが多かったり、面格子を信用しすぎて施錠していなかったり。面格子は、防犯性の高い物・低い物いろいろあって、簡単にネジを外せる防犯性の低い面格子を付けている家もけっこう多い。
また、浴室の窓に明かりが付けば、お風呂に入っていることが一目瞭然という点も注意が必要です。在宅時はセキュリティが甘くなりがち。ちょっとの時間だからと部屋の窓をあけたままお風呂に入ったりしてませんか?仮に施錠していても、家に一人でいるときにお風呂に入る・・・侵入できる時間がたっぷりありますよと外に知らせるようなもの。家に一人でいる時はお風呂を使用しない等の工夫が必要になるかもしれません。

■デザイン性
窓の有る無しが浴室内のデザインに影響することは特にありませんが、一般的に、他の部屋の窓よりは低い位置に付けることが多いため、外から見ると浴室の窓だけ低めになります。ほとんどの家は「あれはお風呂の窓だな」とすぐわかる。外観の美しさにこだわるなら窓は付けない事が多い。付けたとしても、内側からの使い勝手や掃除しやすさ・眺望が犠牲になる事が多いです。

■掃除
窓を付ける=壁の凹凸が増えるということですから、窓有りと窓無しでは窓有りの方が掃除は面倒です。サッシの構造上、掃除しにくい形になってしまうので、水気や汚れが残りやすい=カビが生えやすい場所です。

■換気
昔のイメージで「換気は窓を開けてやるもの」と考える方が多いのですが、窓の有る無しと換気は関係ありません。現代の家の換気は「窓ではなく換気扇が行うもの」です。
風呂の中と外の気温差が激しい(浴室の中に湯気がこもっている)時に窓を開ければ湯気は勢いよく外に出て、いかにも空気を入れ替えているように見えますが、数秒して内外の気温が均一になれば空気はほとんど動かなく(換気しなく)なります。
最も効率よく浴室内を乾燥させる方法は、浴室のドアと窓を閉めて換気扇をONすることです。ユニットバスのドアの下の方には空気を取り込む給気スリットが付いており、下部のスリットから勢いよく空気を取り込んで上部の換気扇で吐き出すことで、窓をあけて自然乾燥させるよりずっと早く効率的に浴室全体を乾燥させることが出来ます。
よって、換気の点では、窓の有る無しは影響ありません。

■断熱
どんな最高性能の窓であっても、標準的な断熱材が入った壁よりは断熱性能が低い。窓があればそのぶん断熱性も気密性も下がります。風呂には大きな窓!とこだわるのは高齢の方に多いのですが、ヒートショックの可能性を考えると窓は無いにこしたことはない。どうしても窓を付けるならば、浴室暖房を付けるなどの対策をおすすめします。

 

以上、お風呂の窓について私が思う事でした。

こうして具体的に書き出してみると、めちゃくちゃ「風呂に窓なんて付けるな」と言いたそうな内容ですね。(笑)
しかしこうしたひと通りの説明をしてもなお、窓を付ける決断をする方は多いです。それだけ、風呂に窓を付けることに価値を感じているということですね。まあ、かくいう私の自宅も窓は付いてますし。

風呂に入るのは夜だけだとしても、換気の役に立ってなくても、たとえ小さくても、窓は欲しい。窓が無い風呂は、なんとなく嫌。そう思うのが人の性というものです。それでいいと思います。

大事なのは、メリット・デメリットを理解したうえで選択すること。

何も知らないまま大きな窓を付けて「冬さむかった、掃除が面倒だった、強盗に狙われた」は救いようがない。自分の希望とデメリットを天秤にかけて、それでもやりたい事なら我慢せずやればいい。浴室暖房を入れて、掃除をマメにして、防犯に気を付ける・・そういう事をちょっとだけ頑張ろうと覚悟できればいいんです(脅しているのではなくて建てる前の心構えの話です)。お風呂にお金はかけたくないし掃除も面倒だし防犯の心配も極力したくないのであれば、昼間でも照明が必要な事を我慢して、窓無しのお風呂にすれば良い。

どっちを選んでも、選んだ理由がちゃんと自分の中で明確ならば、それが正解。どっちが良いも悪いもない、きちんと自分で選べば、どんな浴室も「最高のお風呂!」になります。