「高気密高断熱」の表現方法

高気密高断熱とは当たり前のようにどこでも聞きますが、さてそれは一体どういうことか。

高断熱は断熱材というわかりやすい判断材料がありますが、高気密とはなんぞや。口先だけで説明できる住宅営業はごまんといますが、では実際にどういう事をやっているのか?住宅会社の人間でも答えられない人がわんさか出てきます。

これまでも口酸っぱく言っているので私からの説明は割愛しますが・・・断熱は当然のごとく注目するのに、気密については施工会社や大工ですら重視していない人間が多いのが現実です。

温度差がトラブルを生む【気密の話】

何が重要かを考える。

漏れ出る熱

どんなに高級な断熱材を分厚く入れても、気密が損なわれた家は、高性能住宅ではない。
しかし実際は、そんな住宅が量産されている。

その原因のひとつは、どの申請においても「気密」に関するチェック事項が無い、という点にあると、私は考えています。

建築確認をはじめ、みんなの大好きな長期優良住宅、低炭素住宅等々。はたまた各種補助金・助成金の申請に必要な書類。いずれにおいても、断熱材の性能や厚みを記載することはありますが、気密性能を求められることはありません。つまりは、国や自治体が気密を軽視していると言っていいでしょう。元をたどれば、兼好法師が「夏をもって旨とすべし」なんて書きやがるから、現代にその弊害が現れてるんですよ。

夏をもって旨とすべし・・・兼好法師「徒然草」の一節。日本の家は夏の住みやすさを優先にして、(めちゃくちゃ簡潔に言うと)とにかく風通しを良くしろ、という内容が書かれている。
中学だか高校だかで習って以降、多くの人の精神に根付いて、「風通しがいいのはいいことだ!」と思いこまれている節がある。風通しがいいのは確かに快適だが、住宅自体がスースーするのは風通しとは違うということが理解されにくい。そしてしまいに、「気密ってなんか息苦しそう」とか言われたりするんだよな。身体で気密の良し悪しがわかるほど高気密の家に住んでみろっつうの。

おっと、心の声が漏れました(笑)

とにかく、各種申請や現場検査で、気密性能や施工精度が見られることはまずありません。チェックされない所はそれぞれの裁量でいいわけです。気密の良し悪しは会社の良心・職人のプライドに委ねられている。誰もチェックしないならわざわざ大変な思いをして気密性能を高めよう!という人の割合は・・・推して知るべし、と。

 

高気密高断熱、と謳っている住宅会社で、本当に高気密にこだわっているのはどのくらいでしょうね。極端なことを言うと、「気密シート」を貼っているというだけで「高断熱です!」と言っていたり、ツーバイフォー工法は軸組(在来)工法より気密を取りやすいから「高断熱です!」と言っている会社もある。・・・書いてて悲しくなってきます。

気密をどれだけ大切にしているか。それを正しく判断する手段として、「気密検査」があります。
これは各種申請にはまったく必要のないものです。気密にこだわる会社がポケットマネーで検査して、「やったーこの家は高気密って威張って言えるぞ」と気密マニアがニヤニヤするためだけのものです。(笑)

気密検査の結果

しかし「申請にまったく必要無いのに一所懸命になっている」事にこそ価値があると私は思います。断熱性と気密性、両方を高めてこそ本来の住宅性能が発揮できる。それを理解し、本当に良い家を作りたいという意志があるから、気密マニアになるのです。

そういう点では、良い家を建ててくれる会社を見つける手段として、「気密検査をしているかどうか」は1つのポイントになるかもしれません。気密検査は単なる書類上のものでなく、現場で専用機器を使い気密性能を調べるものですので、ごまかしようがありません。気密検査で「C値」が1.0以下、会津においては0.5以下の数値を出している会社ならば、それなりの信用に値すると思います。

内覧会など住宅会社に見学に行ったら、「この家のC値はどのくらいですか?」と聞いてみましょう。おそらく「わかりません」が多いと思います。下手すると「うわー面倒な客が来た」を顔に出す営業もいるでしょう。C値から話をそらす人もいるはずです。そういう会社は、性能の良い家を作ることは絶対に出来ません。測定結果を見せてくれたり、「この家では測っていないんですが、以前の家では・・・」とか、「気密測定までは出来ていないんですが、こういう気密の取り方をしています」と真摯に答えてくれる会社は信頼できます。大事なのは、C値が実際にいくらかというより、どれだけ真剣に家づくりに向き合っているか。気密を重視しているというのは、そういう姿勢の表れだと言って良いでしょう。

 

最後に・・・
気密マニアの一員である私としては、「高気密高断熱」という言い方はあまり好きではありません。「高気密・高断熱」あるいは「高気密であり高断熱」が正しい言い方ではないかと思います。え?一緒?(笑)
「高気密高断熱」と1つの言葉のように言われると、なんだか意味合いが軽くなってしまうような気がするんです。


気密や断熱を大事にしていたら、「高気密高断熱」なんて一言で表現するのがもったいない。もちろん、お客さんに対してはわかりやすく言うこともありますが、もし断熱、気密、住宅性能などについて問われることがあったら、「高気密で断熱性能が十分に発揮できる家を作ります」と言います。どうよ。こういうどうでもいいこだわりがマニアっぽいでしょ?