三面六臂 ~私の仕事は3種類~

いつも私が「木工事を担当する現場」などと言っていますが、設計事務所のブログとしては意味わからんよな・・・と我ながら毎回思ってるんですよね。なので今回は、私の仕事の種類について書いておこうと思います。 ちなみにタイトル(三面六臂)は、「自分で言うんかい」のツッコミ待ちです。

 

あきやま設計事務所、と名乗っていますが、建築士かつ大工の私には、大きく分けて3つの業務があります。
1.建築士として【他社の】確認申請・図面作成を行う
2.大工として【他社の】現場の木工事を行う
3.あきやま設計事務所として設計~工事一式を行う 

1と2は、元請けとなる住宅販売会社に依頼されて、元請け名義で販売される住宅について「申請」とか「木工事」といった一部の業務を請け負う、簡単に言うと【下請け】の仕事です。1は建築士資格を利用した申請業務のみ行い、お客様との打ち合わせやプラン作成に関わることはありません。2についても、既に完成している図面に沿って大工として木工事をするのみで、設計に関わることは一切ありません。

3では、設計事務所としてお客様と直接話し、打合せから引渡しまでの全ての行程に関わります。私は大まかに言うと設計、現場監督、大工の3足のわらじで現場を見続けます。一般的な設計事務所は、図面を作ったのち工事一式を建設会社に下請けに出すか設計事務所から直接各業者に割り振って下請けに出すかで、現場に居続けることはまず無いので、うちは設計事務所としてはちょっとイレギュラーな部類に入るかもしれません。

 

現在は、2として他社の現場で木工事をしながら、夜間や休憩・休日を利用して1の申請業務と3の打合せ・プラン作成を進めている状況です。3の仕事は打合せやプラン作成からかなり時間をかけています。1棟建つのに2~3年かかることも・・・。時間をかけすぎる分、1と2で稼ぎをカバーしていると言って良いかもしれない(^^;が、どれも私の大事な仕事ですから一所懸命やってます。

 

私の経歴としては大工が最も長く、今でも大半は大工として1日を過ごしているし、職業人としての精神も”大工”が最も自分に近いと感じます。

ただ、建築士資格を取得し、お客様と直接話して仕事を受けるようになると、大工としての考え方にもそれが影響してきたように思います。施主という存在を改めて意識し、自分が作っている家に住む人の生活を具体的に想像するようになった。「この人、この家族のために」というとクサいと思われがちだが、私は純粋に、「この家に住む人たちのために力を尽くしたい」と思いながら仕事するようになった。

また一方で、大工として断熱や気密、防水など、しつこいほどに気にして施工するようになったのは、建築士資格を取得し、建築の理屈を正しく理解し、常に新しい情報を得られているからというのもあります。建築業界も住宅性能も日進月歩。新しい工法や素材が研究され、建築知識もアップデートが必要です。昔ながらの・・・ももちろん大事ですが、新しい情報と正しい知識を持たない大工に良い家は作れません。

大工であること、建築士であることが相互に影響し合い、少しずつですが今でも成長出来ているような気がします。そして、建築士かつ大工である私だからこそ正しく施工でき、本当の意味での「長く安心して住める家」が作れるという自負も持つようになりました。

まあ、正直言えば、同じ大工の仕事といったって、2として下請けで木工事だけするのと、3でお客様と直接話をする元請けの立場にあっては、どうしたって気合いの入り方が全く違います。
1&2と、3の業務の間には、様々な意味で大きな隔たりがある。下請けとして頼まれた仕事だけ請け負う気楽さと、元請けとして負う責任の重さは天と地ほどの差。何度も書いてきている通り下請けだとて私は手を抜くことはありませんが、あきやま設計事務所としてお客様と直接話してゼロからプランを作っていく、きちんと自分の目で見て工事を進めていく事に勝るものは無し。

1や2を続けるのは、もちろん商売だからというのもありますが、情報を得る機会としてなくてはならないもの、だからでもあります。業界の動向、流行の間取りや建材から、地元の業者のいざこざ(笑)、あの職人さんは上手いとか、こういう仕事が出来る職人を探してるんだけど誰か紹介してくれないかみたいなことまで。情報を得たり、こちらから提供したり、繋がりは色々なタイミングでいずれ自分を助けてくれます。

それに、いろんな人、いろんな現場を見ることが出来れば、この建築という業界を客観的に見る機会にもなります。設計者としてそれでいいのかと思ったり、大工としてありえん!と思ったり・・・私の考え方とはちょっと違う人達に出くわす割合が増えるので、ブログのグチ・・・いや、ネタが増える!そういう意味でもなくてはならない仕事!(笑)
「建築士であり大工」の今の私は、わりと良いバランスで仕事出来てるんじゃないかと。自己満足?自画自賛?ではありますが、そんな感じが今の私の状況です。