何が重要かを考える。

現場は断熱材の施工に入っています。

今回の現場の断熱材はグラスウール。グラスウールは断熱材としての歴史は古い方で、淘汰されずに今でもよく使われています。断熱性能もそこそこあって安価なので、総合的には優秀な素材と言えると思います。

ただし、それはあくまでも「正しく施工すれば」の話。

グラスウールはウールというだけあってモコモコしていて扱いにくいです。
たいていの場合は気密シートと一体になった製品を使いますが、断熱施工と同時に気密性にも配慮気を付けないといけないっていう条件も加わります。

壁の中に偏りなく充填してシートを確実に留め付ける施工は一定のコツや技術が必要です。
偏りがあれば断熱欠損となり性能を十分に発揮できない。また、そこから結露が起こってカビ・腐りの原因となる。気密シートの施工が不十分であれば、さらに気密性も損なわれることになる。

そして一番重要なのは、「施工する人間がそれを十二分に理解しているかどうか」です。
前回の現場で使った吹付断熱は専門業者が現場施工しますが、グラスウールの施工は大工が行います。

以前も少し書きましたが、大工という仕事は個人の経験によるところが大きな職業です。資格など必要無いため、専門知識を得る機会は現場以外に無い。意識の高い職人は多くのことを身に着けるが、そうでない人間は…以下略。

現場ごとに、大工によって施工精度に大きな差が出ているのが現実です。グラスウールはその差がとても顕著に出る材料であることがデメリットと言えると思います。

まあ、こんなことをハッキリ言うのは、私はグラスウールの施工が得意だからなんですけど。(笑) なんてね。

今の作業にどんな意味があるのか、ひとつひとつ考えながら仕事をしています。
断熱・気密を損なわないように。何年経っても快適で、安心して暮らせるように。
与えられた材料が最大限の性能を果たせるように力を尽くす。

当然なことなんですが、大工に限らず「人」ってそれぞれですよね。
正直なところ、それが当然と解釈されていない場合もある。

建売住宅だけでなく施主のいる”売り建て”住宅だとしても、お客様のマイホームにかける思いは、現場の一人ひとりまでなかなか伝わってこないのが現実です。
住む人の顔が見えないままに、何が目的かわからないままに、ただ目の前の作業をこなすことが仕事になってしまったりする。

長く家づくりの現場にいると、見えてくるのは良い面ばかりではなく、そういう仕事や態度を目の当たりにしてしまう事もあり、やっていて虚しくなったり悲しくなったり・・・

他を批判したいのではなくて、「自分はこうならないように」「少なくとも自分が納得できる水準に」そう振り返る機会になっている、といったところでしょうか。

自分ばかりが意識が高いという意味では決してないです。
しいて言うなら、実際に同じ建物を作っても仕上がりに大きな差が出る、って知ってもらいたい、かな。

よく考えれば納得できることですが、一般の方々にはあんまり知られていない。それは凄く怖いことだって思うんです。

これから家を建てる方は、とにかく、営業さんだけでなく監督や大工、できれば関連業者まで意識が統一された良い会社を見極めることが、住んでからも安心できる最高の家を作る確実な方法だと思います。

だいぶ話がそれましたが・・・
グラスウールの施工も壁を閉じてしまえば見えない部分なので地味といえば地味。でも私はわりと好きなんですよ。

施工のうまさが住宅性能にハッキリ出ると思ってるからかな。
「俺グラスウール入れ方うまいなー、ここに住む人は快適だぞー、どうだ嬉しいだろう」誰も言ってくれないので自分で言いながら気分良く仕事してます。(笑)

そしたら現場監督が来て「秋山さんグラスウール上手ですね」って褒められた(*^^)v 
もしかして独り言聞いてた?