「設計」とは何か?

設計=間取りを考えること ではありません。

設計=デザインのかっこいい家をつくること は合ってる部分もありますが、もちろんそれが100%ではありません。

間取りや外装・内装デザインを考えることなんていうのは、「設計」と言われるもののほんの数%程度のものでしかない。

じゃあ「設計」とは何なのか?

設計=そこに住む家族にとっての一番良い家を考えること。

「あー、また精神論か」と思ったそこの君!いやいや、もうちょっと付き合ってくれ。(笑)

まあ、こんな抽象的で優等生的な答えでは何の参考にもなりませんね。具体的には、「構造や断熱性能などのハード面と使い勝手や暮らしやすさなどのソフト面を、予算の範囲内で最大限に有効化する家を考える」ことが設計だと私は思います。

「先生」と呼ばれるような建築家ならば、その名前やデザイン力に魅かれ「この人に設計して欲しい」という人が集まるのでしょうが、一介の建築士にはそこまでの求心力はありません。ならばその一介の建築士、私ができる設計というのは何か?それが上記の答えです。

便利そうな間取りを考えるだけでもだめ、構造的に丈夫なだけでもだめ、良い素材を使った良い見た目だけでもだめ。そんなのは素人でもわかります。しかし、それをどういうバランスでどう組み合わせたら良い家になるのか?それを具体的に計画し形に出来るのは、専門知識を持った人間だけです。

そしてここが最も重要ですが、それを「予算内で可能にする」というのが非常に難しい。だからこそここが技術・知識の見せどころでもあるのです。

高性能で暮らしやすくてかっこいい家はいくらでも作れます。そんなの誰でもいくらでも作れるんです。
しかし、お金を出すのはお客さんです。「こういう家が欲しいんでしょ?ならこのくらいかかりますよ」なんて設計ありきで金額を提示する殿様商売、成り立つはずがない。

「予算」という大前提と、こんな家がいいという「お客さんの理想」。倒れちゃいけないこの二本柱があって、そこに良いバランスで肉付けしていくのが【設計】なわけです。

ここまで金、カネ言う設計事務所もあまり無い気がしますが。
なぜこんな話をするかというと。常々疑問だったんですよ。

実際、家を建てるには大きなお金がかかります。それなのに、なんとなくお金の話はしにくいというか、タブー視されている感がありませんか。初めて会うお客さんに「どのくらい出せるんですか?」と聞くのは憚られますが、それにしても、突っ込んだ話が出来る関係性になるまでは予算の話がしにくい・・・というのも変な話ですよね。

「予算」とオブラートに包んでいるが、言い方を変えれば「収入」「貯蓄」を聞いてるのに限りなく近い。これがお金の話を敬遠する原因であることは間違いない。しかし正味な話、私がお受けするならば、予算はいくらでもいいんです。1000万円でも5000万円でも家は建てられます。設計事務所だからといって安い家は建てないなんて言いませんし、あーこの人はこのくらい稼いでるんだ。なんて邪推もしません。

金額を提示されて瞬時に浮かぶのは、「この予算の中でどれだけいい家をつくれるか」ってことです。予算が多いからといって目の色を変えることは無いし、少なくてもちゃんと良い家になるように努力します。正直、予算が多いほうが採り入れる条件が多すぎて大変なことになるんで、経験上、結局どの家も等しく苦労するという統計が出てます。(笑)

予算内でこんなに希望が叶った!と思ってもらえるのが理想。
目指すは「コスパ最高の家」。ちょっと表現が安っぽい気もするが。

なので、私にとっての設計は、やはり「そこに住む家族にとっての一番良い家を考えること」ですね。
ああ結局精神論に行きついてしまった。