良い大工ってなんぞや

大工の仕事や建築に携わる人間としての考え方のようなものを時々書いていますが、今回も仕事のことを書きたいと思います。

建築業界ほど実態が見えにくい世界ってあまり無いのではなかろうか。長くこの世界にどっぷり浸かっていると、逆に客観的な視点でそう思うことがあります。

良い大工のイメージってどんなものがありますか?「現場がいつも掃除してあってきれい」だとか「道具にこだわり、毎日手入れしている」などと聞くと、良い職人さんだなというイメージがあるんじゃないでしょうか。中には実際にそれをポリシーだと公言している人もいます。

でもそんなもの、私にとってはちゃんちゃらおかしい話。
と今回は少々ブラックにいきますよ。

散らかってたら仕事しにくいから現場の整理整頓が行き届いている事は確かに大事。良い道具を使う・手入れすることは作業効率や仕上がりにも影響するからそれも確かに大事な事です。けれども、それってわざわざ言う話ですか?ポリシーです!って威張って言うこと?

確かに私は仕事が佳境に入ると乱雑さを極めるし、大工道具の多くはコメリのプライベートブランド。いや、コメリの道具って案外あなどれないんですよ。釘とか消耗品はコメリブランド最強!コスパ重視!(笑)
ちゃんちゃらおかしい、なんて言いましたが、こんな私は一般的なイメージの良い大工とは言えないのかもしれませんね。

しかし、10年20年先でも不具合の出ない家、長く快適が続く良い家を作りたいという意思を持って仕事をしている点では、誰にも負ける気がしません。

「職人」というと、こだわりを持ちストイックに働くイメージがありますが、そのこだわりの方向性を勘違いしてはならないと思うのです。現場や作業服の汚れを気にして仕事が遅い、良い道具を揃えることに一所懸命で腕が伴わない、そんな自称大工が防水や断熱の理屈を理解しないまま弱点のある家をつくってしまう。外づらの印象だけは良いので「良い大工さん」と言われる。そんな嘘みたいな本当の話がまかり通っているこの業界の現実を見るにつけ、自分自身の大工としての矜持について考えます。

矜持(きょうじ)= 自分の能力を信じていだく誇り。プライド。
最近覚えたんで、使ってみたくてしょうがない(笑)

「住む人の目線」を大事にすること。私にとっては、それより優先すべき事はありません。
ずっと快適で、できるだけメンテナンスが少なくて、長く愛着を持って暮らせる。そこに住む人にとっての「良い家」のために知識や技術を尽くす。私達がつくっているのは、お客様の家。自分の現場だの自分の道具だのなんて二の次三の次でしかない。

見た目の良さを取り繕って実質が伴わない、というものを沢山見てきたので、つい書き方もブラックになってしまいました。

大工に限らず、本当にこだわりを持っている人は、お客さんの話をよく聞こうとするはずです。そして、自分のやり方に固執せず、視野を広げて新しい情報を取り入れる人です。私自身が良い大工かどうかは自信がありませんが、こだわりの方向性は間違えていないのではと自負しています。

まあ、だからといって、道具をどっかに放っぽったままにして「さっきまで使ってたのに見つからない!」っていつも現場を探しまわってる今の状況があんまり良くないだろうなっていうことには、うすうす気づいてはいます。(笑)