見えないものを熱く語る

今日も今日とて、断熱材入れに精を出しています。

大工としての経験を積むにつれ仕事の効率は上がっていると思うのですが、ここ数年、断熱材の施工や気密処理にかける時間は長くなっている気がします。

これは完全にブログの弊害だ。断熱・気密処理はしっかりやりたいと書き過ぎたせいで、自分自身の首を絞めている。

しかしおかげで最近は「あー俺ってグラスウール入れんの上手いわ」って思うことが増えてますね。(笑)
まあそれは半分冗談として、自分で認めてやれるくらいの仕事が出来るというのは気持ちのいいもんです。

設計事務所のサイトって言ったら、デザインや素材にこだわったオサレ住宅の施工事例がずらずらと並んでいるのが普通だと思うんですが、このサイトはそういうのと比べたらたいぶ地味。書いてることは、断熱だの気密だの、はたまた施工精度や職人としての意識だの、目に触れない壁の中・天井裏・心の中(?)の話ばかり。

このサイトは、見た目、デザイン、間取り的なビジュアル的要素が少ない!
・・・ですよね。自覚してます。
それは何故なのか。

身も蓋も無い話をすると、家なんていうのは「施主の希望を形にするもの」であって、「設計者が押し付けるもの」ではないと思うのです。だから施工事例を出したところで、そういう家しか建てないわけではない。インスタでよく見るようなおしゃれなリビング。できます。自然素材を使った家。できます。イケオジが趣味に没頭してそうな男の隠れ家的書斎。もっと凝ったのできます。(笑)そういう希望があれば、そういう家を作りますよ。

この家はこの施主さんの希望を形にしたらこうなった、というだけの事なので、誤解を恐れずに言うと「要望があればどういうふうにでも作る」というのが「どういう家を作れるの?」に対しての答え。
デザイナーズハウスみたいな目を引く奇抜なセンスは自信無いですが、設計者としてのそれなりの知識、大工としての経験がありますので、住宅としての凝った家、ちょっとおもしろい家、友達に自慢できる家、ある程度の要望に応えられる自負はあります。だから、ある家のある部屋の一部を切り取った写真を出したとて、あくまでも見た目でしかない。その家がどういう希望、どういう経緯で出来上がったのかは、写真だけではわからない。それがPRになるのかに懐疑的。施工事例として見た目が大事なのは理解しているのですが、ビジュアル的要素のアピールというよりは、”無理しない資金で出来る限りの希望を叶える”という考え方そのものを重視しているという事のほうが私としては大事です。

・・・ともっともらしい事を書きましたが、まあ、これまで自分で設計した家を写真に残すということをしてこなかった言い訳ですな(^^;
今後は、参考になるような事例をなるべく多く掲載していきたいと思います。

ただ、真面目な話、これは私の最近の悩みでもあり。

お客さんにとっては、「要望にかなうように作りますよ」と言ったところで、あまりに漠然とし過ぎていてイメージも沸かないし、この設計事務所に頼みたい!という決定打になりませんね。

お客さんの希望を聞くべき要素はデザインだけでなく、予算、仕様、工法、あらゆる事に該当します。断熱材ひとつとっても色々な種類があって、それをお客さんに「どれがいい?」って選んでもらうべきか?本来はそうだと思います。しかし、住宅を構成している何百とある素材の1個1個をそうやってやるべきかというと、それはおかしな話だし。そもそも、建築の知識が無いのにそんなことの決定権を委ねられても・・・と困惑するお客さんがほとんど。だったら、一級建築士の言うことは絶対だ!断熱も工法も使う素材もこれ!って大枠を決めてしまったほうが良いのか。それははたして自由な注文住宅と言えるのか?っていうかそれは私のやりたい家づくりなのか?とも思う。

方針がブレブレなんです。1棟1棟、施主さんの事情に合わせてイチから考えるのは悪くはないですが、たまには一級建築士らしく?俺についてこい!的な?ところを見せたいじゃないですか。

住宅に求められる省エネ性能がどんどん高度になるし、デザインや設備関係もどんどん移り変わっていく中で、プロはプロらしく、ポリシーを持って「これがいい!」「こうすべき!」と断言出来るかっこよさが欲しいなと思う今日この頃。いやでも、1棟1棟要望が違うんだから、1つの方針に決めてそれを押し通すことは難しいなぁ。要望に合いそうなものをその都度考えたほうが気が楽だ。

ま、こんなことをここに書いているくらいですから、確固たる方針が決まる予感は今のところまったくありません。このサイトは、世間一般の設計事務所とは一線を画す、人知れず壁の中の事について熱く語る地味なブログがメインコンテンツという結論です。(笑)

それぞれの家庭に合わせた家づくり。一部ですがご紹介します↓

キャットウォーク

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