温度差がトラブルを生む【気密の話】

家の中と外の温度差。特に寒冷地の家づくりではこの問題をきちんと考えずには安心できる家を作ることは出来ません。

その問題は「断熱性」も大きく関わりますが、同等かそれ以上、「気密性」が大事になってきます。

今回はこの【気密】の話です。

この手の話題は物理の要素も入り混じってメンドクサイ話になるし、私も語りだすと止まらない話題でもあるので、なるべく短く簡潔に表現したいと思います。

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温度差のある場所には、結露が起こる。詳しいメカニズムはさておき、これだけ念頭においてください。
冬の窓ガラスが結露するのは、外の冷たい空気と中の暖かい空気が接する場所だからです。氷を入れたグラスが汗をかくのも結露。これはガラスだけに限らず、壁でもどこでも温度差が大きいと必ず起こります。(湿度も大きく関係する話ですが、ややこしくなるのでここでは温度に絞って話をします)

ここではもう何度も書いていますが、「結露の発生を防ぐこと」は、私が家づくりをするうえで非常に重視している条件の一つです。

なんで結露を起こしてはいけないのか。
それは【結露がトラブルの元凶になる】から。

結露=水分です。木造住宅にとって水分は大敵です。窓ガラスが濡れるだけで済めばいいけど、実際は、壁の中や天井裏、床下でも起きています。窓ガラスが結露しているような家は、壁の中の結露も心配したほうがいい。

結露→柱や梁などの構造体が濡れる→通気が悪い場所は乾かない→カビ→いずれ腐る→構造体が腐ったら・・・・?

では、結露を起こさないためにはどうしたら良いか?
1.高性能な断熱材を隙間なく入れる。
2.窓も同様に、断熱性能の高いサッシを入れる。

基本的には、この2つです。この2つで温度差のある内と外の空気を触れさせないようにすれば、結露は防げます。
ただし、これも何度も言っていますが、これらを「正しく施工する」ことこそが本当に本当に最も重要。


いくら高性能の断熱材を使っても、施工でスキマが出来たら、そこから冷たい空気が入り込んで結露します。これは「断熱性」は高いが「気密性」を損なっている状態です。高いお金を出して良い断熱材を入れて、書類上は「超高性能住宅です!」と威張ったところで、実際の施工がテキトーだと簡単に結露する→腐る→構造的に不安な家、ということになってしまいます。これのどこが高性能住宅なんでしょう。

施工している本人が「面倒だからテキトーでいいや」など悪意を持っているわけじゃなくても、正しく施工することの意味を正しく理解していない、知識と意識の甘い人間が施工することがままある。

工事に関わる全ての人間が建築の正しい知識を持っているか?世間的にはそれが当然と思われているのでしょうね。少なくとも、私が設計から工事まで請け負う家においては、着工から竣工まで張り付いて正しく施工されているか見張りたい。とは思っています。(察してください)


結局話が長くなりましたが、そんなわけで、我が家の窓の部分をサーモカメラで撮影してみました。
一応、私自身が気密性までこだわってきちんと施工したつもりの家ではありますが、それでも場所によって温度差はあります。(2021年11月20日撮影)

冬、室内の暖かい温度を一番逃がしているのは「窓」です。壁や屋根、換気などからも熱は逃げますが、全体の約50%が窓から逃げると言われています。いくら壁の断熱を良くしたところで、窓の性能が悪いと暖房効率が悪いし結露も起きる。これをカバーするためには、できるだけ性能の良いサッシを入れたいところ。

新築を建てるとき、私がまずおすすめするのはYKKのAPW430というトリプルガラスの樹脂サッシです。断熱性が高く、サッシ自体の構造的にもなかなか良くできていると思います(YKKの回し者ではありません)。

私が設計するうえで個人的にあまり使いたくない窓のひとつに「引き違い窓」があります。デザイン的に野暮ったくなりがちなので意匠設計をする建築士はあまり採用しない傾向がありますが私の理由はそれではなく、「気密の面で弱点のある窓だから」。

引き違い窓のようなレール上を転がして開け閉めするタイプの窓は、レール部分がどうしても外気と通じやすく、ぴっちり気密を取るのが難しい形状なんです。ここが弱点となり、高断熱高気密の家でも引き違い窓から結露を起こす家はけっこうあると思います。

しかし大きく開く窓を付けたいという要望があると、引き違い窓を付けざるを得ない。開口の大きい窓といえば折れ戸なんてのもありますがこれはさらに断熱・気密的に選択肢に入りません。

そんな悩みを持っている時に見つけたのが、APW430の「大開口スライディング」という窓。我が家にもこの窓を使っていまして、それが上の画像です。長い長い前置き。やっと本題に入ります。

大開口スライディングもレール上を転がして開け閉めしますが、引き違い窓と違うのは、閉じるときにサッシの枠にぎゅっと密着するため、気密が損なわれない構造になっている点。レール部分はどうしても弱点ではあるのですが、このサッシだからこの程度で済んでいると言って良いでしょう。引き違い窓があれば比較できるのですがうちに無いので・・・また別の機会に改めて掲載したいと思います。

こちらはぴっちりと閉められる横すべり窓。左上はエアコンで、紫色になっているのは、室外機と通じているダクト部分。ここもかなり気を遣って断熱処理しましたが、それでも配線やホースから外気温が伝わるため、温度差があります。

私のようにしつこく断熱だの気密だのと語る人間が施工した家でさえ、温度差は生まれます。この温度の差が大きく開いてくると結露が起こる。
室温20度、湿度50%の時なら、温度差が10度あると結露が発生します。会津の冬なら外気温との差は10度どころか20度以上になりますから、窓や断熱材の性能(+施工精度)次第で簡単に結露すると考えられます。

結露やそれによる不具合を想像できなければ、どういう事に配慮して施工したら良いかもわかりません。少なくとも私が施工精度まで責任を持つ住宅に関しては、結露防止のための気密・断熱処理についてこだわって考えていきたいと思っています。

何が重要かを考える。

漏れ出る熱