大工の仕事って?2

前回、大工の仕事についてお話ししました。

現代の大工は、使っている道具は近代的だけど、触覚や視覚、使う感覚は今も昔も同じ。
むしろ、常に進化してる住宅性能や技術を理解して正しく施工するために、新しいことを取り入れる柔軟な対応力が必要という意味では、五感だけではない感覚を持たないと大工としての仕事が成り立ちません。

「昔ながらのやり方にこだわる」という価値観も、その時々で変えなきゃならない事もある。

 

今回はもう少し突っ込んだ話を。

 

大工になるのに、資格は必要ないです。
だから、初めて仕事をするその日からでも「自分は大工です」と名乗ることができる。

大工を集めて、最新の住宅技術を学ぶ講習会、なんていうのも公的なものは無いです。(ハウスメーカーなど大きな団体では開催しているところもあるかもしれませんが)
必然的に、職人によってその考え方も意識も仕事の内容も大きく違ってきます。

 

現場では、施工の詳細を指示した設計図はもちろんありますが、1から100まで書いてあるわけではないんです。30くらいの割合は現場に委ねられている事が多いです。
そこを誰の裁量でやる?現場監督が四六時中いてくれればいいですが現実はそうでもありません。

新築現場での木工事の期間はだいたい2か月前後。
2か月のあいだ、「現場の裁量」が積み重なっていったら、担当する職人によって仕上がりはどのくらいの差が出るのか。

 

それが顕著なのが、高性能住宅の新築です。

最近の高性能住宅の施工方法に慣れておらず四苦八苦しているベテラン大工の姿を幾度か見てきました。
技術の乏しい新人もしかり。

どうしてこういう施工をしなければならないのか。そういう理屈もわからず図面を頼りに正しく施工できるかどうか・・・それ以上のことは、言わずもがなです。

 

住宅の技術は、ずーっと同じことを積み重ねてきた職人だけでは手に負えなくて、いろんなところから指導を受けないと大工は今の住宅を建てられないなって思います。

 

大工ってたぶん、一般的なイメージにある通り「頑固」とか「気が短い」人種です。自分も含めて。(笑)
だから、自分が持ってる経験や知識が正しいと信じて、設計だろうが監督だろうが、ああしろこうしろって言われるとなんとなく反発したくなったりします。

でも最近はそれが通用しにくくなってるんですよね。

 

その点、自分は一級建築士だから、知識もある大工だって言いたいんだろって?そうかも。(笑)
いやいやそれは冗談で、ほんとは頑固で短期な大工気質が9割。新しい技術、新しい素材、ついてくのは大変です。

 

自分の場合は、資格が云々とかいうより、幸か不幸か細かい性格なので(笑)あれはどうだ、これは何でだ、って疑問に思ったことをいちいち深堀りしないと気が済まなくて、「取り残されないように情報収集しなきゃな」って思いながら仕事をしています。

 

 

もしあなたが自分の家を信用できる人に任せたいと思うなら、できるだけ職人と話をしてください。
どのくらいの知識を持ってるか、なんて難しいことはわからなくても、どれだけ「知ろうとしているか」が判断材料になると思います。
最新技術のことだけじゃなく、あなた自身のことも知ろうとしてくれているなら、きっと出来ることを精一杯やって、満足の家をつくってくれるはずです。