浴室

T邸の浴室は、私がこれまで見たユニットバスの中でダントツ1位のシンプルさが特徴です。

「お風呂は身体が洗える機能があるだけでいい。浴槽も無きゃ無いでいい。」と言うTさん。「いやいや浴槽は必要でしょう」「えーじゃあ浴槽は付けてもいいからお風呂全体の大きさを狭くする」「いやいや今後手すりや介助が必要になったときに狭いと後悔するから」「えーじゃあ・・・」「いやいや・・・」押し問答(笑)しつつショールームで仕様を決めました。

「お風呂の時間を重視しない。費用もかけたくない」「水まわりの掃除は可能な限り簡単に済むように」というのがTさんの条件。要らないところにお金をかけるくらいなら薪ストーブを少しでも良いものを入れたい、という、優先順位がはっきりした予算設定です。

便利機能や高級素材を全てスルーし、必要な要素だけが付いている最もシンプルなグレードを選定。浴槽は余計な凹凸のない形、窓は掃除が面倒なのでもちろん無しで設計してあります。標準仕様で付いている棚や鏡まで「無しっていう設定は出来ますか?」、本来なら無しの設定が出来ない洗い場カウンターも「カウンターの料金は入ってもいいので、工事のときに取り付けをしないっていうことが可能ですか?」と、ショールームの担当者から営業、施工、本社まで巻きこみ、最終的にはT邸完全オリジナルのユニットバスが完成。ユニットバスというと企画商品なので仕様はある程度決まっているものかと思っていましたが、案外融通がきくもんですね。

メーカーによる施工が完了したユニットバスを見たTさんの最初の一言「あっ、なんかアパートの風呂みたい」に思わず笑ってしまいました。「まさしく希望通り。何も無くて最高」

壁がホーロー製でマグネットが付くので、シャンプーなどの棚やタオル掛けは後から好きなものを購入して付けます。普段の掃除は最低限。こまごまとした箇所は取り外して洗えて、手間を極力省いた浴室です。「湯船に浸からないのに浴槽も洗わないといけないのが面倒だな」やっぱり浴槽を付けたことに若干不満のご様子。

後からよくよく聞いたら、古いほうの家では毎日湯船に1時間は浸かってるそうです。そんな人がよく浴槽要らないと言いましたね( 一一)「古い家は寒いから。あったかい家になったらお風呂で体をあっためる必要が無いでしょ」だって。なるほど一理ある・・・。けどやっぱり湯船に浸かる気持ち良さをたまには味わいたくなるはずですから。今は大丈夫でも、いずれきっとね。