太陽光発電で電気代高騰問題は解決するか?【家にまつわるお金の話1】

この上昇率を「爆上がり」と表現せずして何と言うか。

・・・っていうくらい、この冬、電気代が上がりましたね。少なく見積もっても前年比1.4倍。東北電力は5月以降さらに値上げ予定、特に深夜電力の値上がり率が高くなるようです。深夜電力の安さの恩恵を受けていたエコキュート等を使っているオール電化住宅は、電気料金の負担が大きくなりそうです。

しかしガス料金も昨年から値上がりが続いており、単純にオール電化をやめれば良いという事でもないようで。電気・ガス・灯油、いずれのエネルギーを使うにしても、これまでよりも家計の負担が大きくなることは間違い無さそうです。

 

「東京都では今後、新築住宅全戸に太陽光発電設置を義務化する」というニュースに「んな無茶苦茶な」と思っていましたが、こうも電気代が高いと太陽光発電が気にならざるを得ない。義務化が良い事かどうかは疑問ですが、太陽光発電を導入する住宅の割合は増加するでしょうね。

 

3年前に完成した喜多方市のT様邸で太陽光発電を付けています。夏場は太陽光発電でエアコンを使い、冬は薪ストーブを使う生活。
本当なら冬場の暖房費が一番気になるところですが、薪ストーブなのでそこは参考にならない・・・汗
なので、今回は太陽光発電や電気代について焦点をあてて話を聞いてみました。何かの参考になれば幸いです。


■太陽光発電の仕様など基本情報
設置パネル5.6kw、売電価格26円/kWh、売電約15万円/年、使用電気料金約9万円/年(約6万円のプラス)。山間部のため積雪は市内より多い。屋根は南向きで陽当たりよく、発電環境は良好。

■発電状況
当然、雪が降ったらパネルが埋もれて発電しなくなる。だから雪国での設置は正直微妙だと思う。ただ、全く使い物にならないわけではない(雪国の冬でも案外晴れて発電する日は多い)。屋根の勾配が緩いと雪が落ちにくいので、太陽光パネルを付ける場合は屋根の角度を気にした方が良いと思う。外観デザインとの兼ね合いの検討が必要。

■現在の電気料金
深夜電力が安く(夜10時~朝8時、11円/kWh)、昼間の電気料金が高い(朝8時~夜10時、32円/kWh)料金プラン。安い深夜電力を利用して給湯・食洗機・洗濯機などを利用している。電力使用割合は深夜7:昼間3くらい。夏は多少の曇りでもガンガン発電してくれるので、昼間に使うエアコン代は全くかかっていない。

■今後の電気料金増加の見通し
深夜電力が11円→30円/kWh、昼間が32円→44円/kWhになり、去年の1.5倍程度(月平均7250円→約11000円)になる見通し。深夜電力を使う割合が高かったため、今後は給湯・食洗機などは発電している昼間に使うことを検討している。給湯器は、Wifiで繋げば翌日の天気情報を取得し、お湯を沸かす時間帯を自動で判断する機能あり。これで去年の電気料金に限りなく近づく予定(そのぶんの売電は多少減るが)。

■太陽光発電のメリット・デメリット
我が家の場合、年間6万円はプラスになっているが、太陽光パネルの初期費用がかかっているのでトータルでいうとおそらくマイナス。これは最初からわかっていたことで、新築時「せっかく家を建てるのに電気代を気にしてあくせく節電したり、家の中で暑さ寒さを我慢するようなひもじい生活をしたくない」という【精神的安定】が第一の目的で太陽光発電を設置した。これから新築する方も、同じような考え方であれば太陽光発電のメリットを感じやすいかも。我が家の新築時点では蓄電池がかなり高額で手が出なかったが、今後安くなってくるのであれば一緒に設置したほうがもっと太陽光発電の恩恵を受けられると思う。

※情報は2023年3月現在。太陽光発電の仕様や電気料金プランによって金額は異なるので、あくまで参考まで。



T邸は薪ストーブのため冬の電気代は参考にできませんでしたが、電気による暖房を使うのであれば、太陽光発電があっても現時点の収支でマイナスになっていたことが想像されます。

発電して自宅で使わずに余った電力は東北電力が買い取って(売電)いますが、売電価格はどんどん下がっているのが現状です。T邸での状況にもある通り「太陽光発電を付けても得しない」は事実だと思います。

ただ今後、電気料金がもっと上がっていくのだとすれば、「得しない」状況は一転する可能性も秘めています。値段の高い電気を太陽光発電で自給自足出来るのであれば、太陽光を付けない家よりも家計の負担はかなり減ることになるでしょう。

また、太陽光発電があることで「四六時中電気代を気にする」という精神的な締め付けが無い生活は、金額では測れない価値があるかもしれません。

特に全館空調の家や、赤ちゃん・ペット等のために24時間一定温度を保つ必要がある家庭、リモートワークなどで昼間の在宅が多い家庭などは、太陽光発電のメリットを感じやすいのではないかと思います。屋内で熱中症で亡くなる高齢者が増えている事を考えても、「電気代を気にせず家電を使える」という安心感は案外重要な事なのかもしれません。室内を適温に保つことは、我慢するしないという精神論だけでなく、実際に身体への負担を減らします。高齢者はもちろん家族全員の健康を守り、医療費の抑制によって最終的には家計を助けていた、という結論にも十分成り得ます。

 

太陽光発電で電気代高騰問題は解決するか。端的に言うと「解決しない」でしょうね。積雪のある会津では冬場の発電量が少ないのが圧倒的に不利。現時点では、太陽光発電を採用しないと決めてもデメリットは無いでしょう。

ただし、今後の電気料金の値上がり状況によって結論は変わるし、太陽光発電を採用してメリットが有るか無いかは、各家庭の事情によって異なる。家族みんなで節電が楽しめるか。電気代に一喜一憂するのが苦にならないか。T家のように「精神的安定」のためという理由ならば、太陽光発電を採用することの意義はある。そして、夏の厳しさが増すほど、電気代が上がるほど、会津においても太陽光発電のメリットは増えてくると言えます。蓄電池の普及具合によっては、電力の完全な自給自足も可能になるでしょう。

あなたの家に何を採用するかは、暮らし方次第。ガスや灯油などその他のエネルギーの選択肢もありますので、目先の出費だけでなく大きなスパンで考えて検討することをおすすめします。