“持ち家か賃貸か”論争【家にまつわるお金の話2】

「賃貸で一生家賃を払い続けるなんで無駄。持ち家なら年をとってから家賃の心配をしなくていい。トータルで考えたら持ち家のほうが安くつく」と言う人がいます。

「持ち家」を造っている側の人間が言うのもなんですが、そんなもの、ちゃんちゃらおかしいと言っておきましょう。

磐梯町の改修の時ににも書きましたが・・・
家は建てて終わりではありません。

メンテナンス絶対必須必要経費です。しつこいほど太字にしましたが、これをケチる家は長く住めなくなります。まあ、雨風を凌ぐだけなら住めないことはない、「安心して快適に住むことは不可能」という表現が正しいか。

メンテナンスとは、お風呂やキッチン、壁紙をリフォームで新しくすることではありません。じゃあ何かというと、たとえば紫外線や雨雪などによる劣化・破損を防止(または補修)する措置などを指します。定期的にメンテナンスすることによって、躯体が腐ったり耐震性・断熱気密性の低下などを未然に防ぎます。メンテナンスしないで放っておくことは家の性能を悪化させ、住む人の身を危険にさらすことにつながります。

メンテナンスの具体例はまた別の機会に説明するとして。今回は資金的な話です。

だいたい10年サイクルで数十万~のメンテナンス費用が必要になります。30年もすれば屋根・外壁の張り替えなど大規模な改修が必要となり、数百万円単位になるでしょう。私の感覚では、向こう30年にかかるメンテナンス費用を新築直後から積み立てるとすると、毎月3万円は必要になる計算です。3万円×12カ月×30年=1080万円。30代で新築し80代90代まで住み続けたいと思ったら、もっと沢山の費用がかかるでしょう。

持ち家は、建ててからもメチャクチャお金がかかるんです。よく「いま住んでるアパートの家賃と同じくらいの月額のローンで家を建てたい」と言う人がいますが、仮にそれで家を建てたとして。アパート住まいより広い家に住むからには当然光熱費も高くなるし、毎年の固定資産税もかかる。これでも「持ち家の方が得」と言えますか?

そして、忘れてはいけないのは、持ち家は「解体にも費用がかかる」ということ。「この家は子どもに継がせる」と言うのであればそれも結構ですが、築40年50年も経った古い家、直しもせずそのまま次の世代に受け継ぎますか?大規模な改修をするか、結局「建て替えたほうが安い」みたいなことになりませんか。その費用は誰が負担しますか。お子さんがリフォーム費用を負担するにしたって、お子さんが80歳90歳になるまで修繕無しでその家に住み続けられると思いますか。子や孫の代まで安心して快適に住み続けられると言えるくらい、あなたの代からきちんと家の寿命を保つメンテナンスができますか。

こうして1棟の家にかかるコストを計算すると、結局は「持ち家の方が安くつく説」=ちゃんちゃらおかしい、となるわけです。

もちろん、賃貸は賃貸で、生きている限り家賃を払い続けなければならないという負担がありますので一概には言えません。長生きすればするほど賃貸のほうが出費はかさむ可能性も高いですし。

 

ならば、家を建てようか、賃貸のままがいいのか、何を基準に決めたら良いのか。
簡単ですね。
「お金がかかってもいいから、自分の城が欲しい」と思ったら持ち家を選べば良いんです。
え?そんな月並みな答え求めてない?(笑)

ここまで書いておいてなんなんですが、やっぱり、結論は出ないんですよ。
ざっと計算してみましたが、持ち家と賃貸で生涯かかるお金は「トントン」といったところです。もちろん人それぞれなのであくまでも概算ですよ。
賃貸の場合の家賃や、家にどれだけお金をかけたいか。金利何%の何年ローンか。その家の固定資産税はいくらか。どのくらいの光熱費が想定されるか。それによって算出される金額が千差万別なので、ハッキリとした結論は個別にちゃんと計算してみないと誰にもわかりません。

一般論としては。
結婚、出産、子どもの進学・独立、退職・老後など、ライフスタイルは変化する。暮らし方や家族の人数によって部屋数・広さを変えられる賃貸は、家賃も光熱費も金銭的に無駄がない。住む場所を固定しない気楽さを好む人もいるでしょう。「老人に賃貸は貸さない」という都市伝説は嘘なので心配しなくていいです。独居の高齢者が増えればそれだけ賃貸の需要も増えます。需要が高まれば必ずそこに商売が生まれ、必ず供給があり、便利な賃貸がどんどん出来ますから。一方で、どうしても「自分の城」にこだわりたいなら建売でも注文住宅でも買えば良い。

結局は自分(や家族)の考え方・価値観次第であり、第三者が出した答えなんて何の参考にもならないということです。あなたや家族がどういう暮らしをしたいか、それが「持ち家か賃貸か」の判断基準です。

 

「持ち家か賃貸かで悩む」っていう時は結局、「自分の家が欲しい」「持ち家のほうが得という結論が欲しい」ということではあるんですよね。誰かに背中を押して欲しい!という気持ちの表れ。うんうん、わかる。

背中を押せるかどうかはわかりませんが、上で示したような個別の計算はこちらで出来ます。どんな家が欲しいのかという話と合わせて、お金の面でも相談して頂ければ、何かしら有効なご提案が出来ると思います。