現場の現実を見てみましょう。

磐梯町のリフォーム現場です。

新築から20年、経年によって外装が古くなってきたため、屋根と外壁の塗装を行います。

塗装に先駆けて、20年の間に劣化・老朽化した部分の木工事を私が行います。その最中で、「あー、これは・・・」な箇所を見つけてしまいました。

家屋本体から延びる梁が、外壁で覆われている部分。外壁同士を繋ぐコーキングが劣化して、隙間が空いていました。外側から叩いてみると、身の詰まっていない軽い空洞のような音。あ~、考えたくないけど、まずい予感。

リフォームの契約内容には入っていませんでしたが、気付いちゃった限りは知らないふりをするわけにいかない。家主さんに外壁を剥がす許可をもらい、開けてみたらコレです。

【悲報】梁が腐っています(涙)
見るからに中がフカフカしているのがわかり、少しほじるだけでボロボロ。「これはだいぶヤバイかもしれない。」

出来ればこのままフタして見なかったことにしてしまいたい。しかしこのまま放っておくと、おそらくとんでもないことになる。梁部分の外壁を全て取り去りました。

雨水が浸み込んだ状態が長い事続いていたようです。腐食は梁の下端まで及んでおり、この状態から「補修」はもう出来ない状態です。

原因は、新築施工時のずさんな防水処理によるもの。雨水が侵入しやすい形状の外壁が、それを考慮されずに施工されていました。

新築時はそれでも外壁の間を繋ぐコーキング材が防水機能を発揮していましたが、20年間1度もメンテナンスされていなかったため劣化して雨水が入り放題に。そういう原因が重なって、このような事態になりました。

20年前、防水に関する知識や技術は、今ほどのレベルでは無かったかもしれません。しかし当時であっても、防水に配慮できる人間が一人でもいれば、ここまで酷くはならなかったはずです。

施工した住宅会社は既に倒産しており、責任を追及することは出来ません。そもそも20年経過しているためおそらく保証があったとしても対象外。

また、この部分の防水の要となっていたコーキングは劣化してボロボロの状態でした。本来であれば10年経過した時点で一度コーキングの打ち直しが理想。少なくとも、年に1度は状態を確認して劣化具合を把握しておけば、ここまで腐ることは無かったと思われます。

しかしそのような基本的なメンテナンスの概念すら伝えないまま、住宅会社が施主に引き渡してしまった。

話せば長くなるので結論から言うと、腐っていたのはこの部分だけで周囲の柱は生きていたのが不幸中の幸いでした。構造的には大きな影響が無いと判断できたので、これ以上腐食が広がらないよう、腐っている梁を撤去して事なきを得ました。

腐食が柱まで広がっていた場合は構造に大きな影響を与えるため、構造材の入れ替え・補強などだいぶ想定外の大規模工事になります。
ボロボロの梁を見てまず私が途方にくれましたが、それ以上に家主さんがショックを受けてしまいました。今回は最悪の事態まで進んでいなかったので結果オーライですが、発見がもしあと数年遅かったら。ましてや、見つからないまま住み続けていたら。

 

 

これまで何度も愚痴ってきましたが、こういうずさんさは、現在でも決して無くなっていません。
住宅会社の知識不足。施工する人間の意識の低さ。
そして、住宅会社から施主までもが「建てたら終わり」と考えてしまう、住宅業界全体の悪しき思考構造がこういう事態を生んでいます。

契約を取りたい住宅会社は、メンテナンスの費用・頻度まで積極的に言及することはあまりありません。
本来であれば、建築費だけでなくメンテナンス費用も考慮して総額を計画するべきです。しかしお客さんは大きい金額を目にすると家を建てる気持ちが萎えてしまう。売りたい方がメンテナンスコストやランニングコストまで配慮するような親切心は持ち合わせていません。建築費というイニシャルコストだけでローンを組み、その後のことはうやむや。メンテナンス費用を積み立てていないので、大きな修繕が必要になったときにあわてることになるわけです。

そして私が理不尽に思うのは、多くの人が「それが普通」だと思っているということ。

たとえばの話。

新築してから20年後、雨漏りするようになったので、新築した時の工務店に見てもらった。
工務店「20年も経つとどうしてもこうなっちゃうんで、しょうがないですね。修繕が必要なので100万円かかります」
こう言われたら、一般のお客さんは「そんなもんか」となる。
そもそもの施工がまずかった可能性は?とか、雨漏りする前にメンテナンスチェックで気付いてたら10万円で済んでたかもしれないとか、そういう事実が見過ごされる。

世の中、そんな事ばかりですよ。
正しく施工して何事も無いのは当たり前だし、たとえ不具合が起きても「劣化すればそんなもんだ」と言われてお客さんが納得してお金を払えば、全て丸く収まってしまう。

丁寧に作ったって、テキトーにこなしたって、同じってこと。
そりゃ、テキトーな現場が減らないわけだ。

 

 

 

閑話休題。
磐梯町の現場は、家主さんとの話し合いを重ね、「できれば費用は最小限」の希望をかなえつつなんとか修繕完了。ひとまず当面の不安要素は取り除けたと思います。
契約に入ってなかった厄介事をみずから背負いこんでここまで対応できる大工は他にいないと自分を褒めてやりたいです。(笑)

正直、こういうリフォームは頼まれるとつらい。ちょっとした修繕だと思ってフタを開けてみたら「うわ~・・・」っていうケースが多いので。終の棲家としてあと20年30年暮らすつもりでいたのに、想像以上に我が家の劣化が酷いという現実。家主さんにとって精神的につらいし、金銭的にもショックが大きい。そして予算の無い中で解決を求められるこちらもつらい。

だからリフォームは頼まないでください。(笑)
もちろん、やるとなったら手を尽くしますけど。精神的な消耗が激しいので頻繁には難しいっす。



そういう意味では、新築って楽だよな・・・
俺には新築が向いてるわ・・・
そう何度もつぶやいた出来事でした。


「20年後30年後にかかるメンテナンス費用が最小限の新築をつくります。」
って、こんなまわりくどい表現しても、誰も興味持ってくれないんだよなあ~~(悲)
誰かこの大切さに気付いてくれ!

 

 

20年先でも不具合の出ない家、私の家づくり観↓

メンテナンスコストのことまで考えた家、たとえば↓