家づくりにおける条件のマッチング

“家に求める価値は、一人ひとり違う”というようなことを以前書いたことがあります。

雨風しのげて寝起きできればそれでいいのか、家にいる時間を豊かなものにしたいのか。最低限の費用で済ませたいのか、暮らしの快適さや所有する喜びを得られる住まいという形が欲しいのか。

今でも迷います。最低限の費用で家が欲しいという人に、どこまでの性能の住宅を提供すれば良いのか。最低限とは言っても、快適性が低かったら、満足度が低い家になってしまうのではないか。かといって、仕様をまともにすれば費用もかさむ。その落としどころはなかなか難しいです。

企画住宅に自分たちの生活を合わせられる人。(それが悪いのではなくて、重視する所が違うという意味です)
とにかく家が欲しくて、短時間で提案された家を契約して満足な人。
贅沢な仕様で、快適な家を手に入れる人。

色々なケースを見過ぎました。

大工として工務店などの木工事を請け負う時、もちろんその時点で設計は固まっていて、私はそれに従って施工するのみです。私が出来ることは精一杯やりますが、根本的に不足している要素を補うことはできない。

それでも完成した家に満足している人はいる。

誰も間違ってない。建てて良かったと思えれば、それが一番「良い家」になる。

正直なところ、これだけの金額を払うなら私ならもっと良い家が建てられる、と思うことは有ります。知識の半端な営業が考えた間取りがそのまま形になってしまう家、都会のデザインを真似るだけで降雪・寒冷地の配慮の無い家、そんなものが当たり前にまかり通っていることが疑問でならない。自分ならば、と。

でもおそらく、そういう事ではないんですよね。これが「家に求める価値は人それぞれ」という結論に行き着くんだろうなと感じます。
そのハウスメーカーのブランドが良いとか、話が合う営業から買いたいとか、とにかくデザインが気に入ったとか。欲しいのは単なる家という物体の質の良さだけじゃないということ。100人が100人、じっくり考えて家づくりがしたいわけではない。むしろ、家のことはわからないから「じっくり考えて」と言われても困る、という人が大半なのではないか。

そういう「家に求める価値」が色々ある中で、私が出来る家づくりとは何なのか。それはやっぱり、施主自らもじっくり考えて家づくりと向き合う、それを私がサポートするような家づくりなのではと考えます。
家に自分たちの生活を合わせるのではない、その家族に合わせた、100%オリジナル仕様の家。色々な話を聞いて、自分の家にどんなものを求めているのかを洗い出し、考え尽くして建てる家。

そういう家を求めているのは、100人のうち1~2人かも。
だけど1人でもいるなら、その人の家を造らせて欲しいなあ。
そんな理想を描きつつ仕事してます。


いま流行りのマッチングアプリみたいなの、家づくりバージョンもあればいいのにね。希望条件で検索してお互い求めてることが近ければ、みたいな。
う~ん、うさんくさいな。(笑)